作家・西野達郎さんを制作現場にたずねて
●130年の歴史をもつ「會芳亭」
作品「ヴィラ 會芳亭」は、横浜・中華街の関帝廟通り、山下町公園にある。山下町公園にはベンチやすべりだい、ブランコがあって、地元の人の憩いの場であり、旧正月には春節の行事も行われる中華街の人にはたいせつな場所のひとつでもある。ここには昔から人々が集う場としての長い歴史があった。
1870(明治3)年ごろに「會芳楼」という劇場兼料亭が建てられ、中華民国総領事館が置かれたこともある。関東大震災、空襲を経て、1960年に公園として生まれ変わり、2000年中国風の東屋「會芳亭」が設けられた。
●東屋を天蓋にベッドをつくる
そこには白い3階建てくらいのプレハブ風の建物があり、窓が少なく、飾りもなく、直方体の大きな箱のようだ。住居にしてはちょっと不自然なところがある。実はこの中に會芳亭がすっぽり収まっている。これが西野さんの作品である。
會芳亭は、6本の赤い柱が緑色の六角形の屋根を支える東屋で、屋根の下には背もたれ付のベンチがぐるりと並べてある。天井を見上げると、極彩色の花鳥画に賛がかかれ、中央には大きな明かりが灯り、優雅な気分にさせてくれる。西野さんはこの天井を天蓋に見立てて、ベッドを置くことを考え、ホテル仕様のコンセプトに至った。
建物は床が地上1メートル80センチ程にあり、階段設置予定のところからよじ登って内に入った。外側はほとんど完成しているが、内部は工事の真っ最中、建築家もボランティアといっしょに角材を切り、壁に打ちつけていた。この上に壁板、壁紙を貼る。床に比べて天井がとても高いのは、傾斜の急な六角形の屋根と屋根の先に宝珠があるからだ。
基礎はプロにお願いするが、ボランティアも加わるのが、今回のトリエンナーレ流でもある。
●「會芳亭」が高級ホテルに変身
完成すると85平方メートルの高級ホテルの1室ができあがる。バス、トイレはもちろん、メンテナンスは本職のホテルマン、家具は最高級のイタリアのメーカー「カッシーナ」。パンフレットにはHをあしらったロゴマークがあり、「貴方に特別な夜を準備します」とメッセージを込め、値段票は薄い半透明紙という凝りようだ。
観客はレセプションを通って、室内を見学できる。入った瞬間ハッとさせられるに違いない。それが西野さんの狙いでもある。
●ハブリックをプライベートに取り込む
公共にある物体を個人的な部屋に置く、そこには外からは予想できない空間が出現する。部屋に入るとどこにアートがあるのだろう探す人も、ぐるりと見回し不思議そうに帰っていく人もいるだろう。
パブリックをプライベートに取り込むのは、西野さんオリジナルの発想で、1997年からこのようなインスタレーションを世界各地で行って評価を得ている。
このような手法は、個展での経験が元だった。個展を開くと、初日は大勢がきてにぎわうが、以降は1日に1~3人が来る程度。美術は専門家だけが見て評価するのではない、もっと多くの人に見てもらえる作品を作りたいと考えたからだという。
●天使やコロンブスに会える部屋
日本での初めての発表は2002年に水戸芸術館で行われた「日常茶飯美-Beautiful Life?」展で、屋上の給水塔を床の間に置いた。
また、2002年にスイスのバーゼルで行われた「天使」プロジェクトでは、教会の尖塔を飾る天使を居間のテーブルのうえに飾った。部屋は40メートルの高さにあり、天使に会うため4万人が階段を上った。展覧会後の調査で天使は13世紀の作とわかり、金箔を貼られ大切にされている。
昨年2004年にはスペインのセビーリャ・ビエンナーレでは、2メートルの台座にある実物大のコロンブスの像を居間に招いた。
●寒くて暗いドイツで考えたこと
西野さんは、武蔵野美術大学卒業後、見聞を広げ、美術作品を見るために、ドイツに渡り、今年で17年になるという。デュッセルドルフの寿司屋でアルバイトをし、その後、ミュンスター芸術大学で美術を学び、現在はケルンに住んでいる。
ドイツの大学では教授がアーティストで、作品の制作課程や作品との対峙を見ることができ、学生各自に作品がまかされている。与えられた課題をこなす日本の美術大学とは違うところがよかったという。ドイツの文化を重視する姿勢に大きな違いを感じ、暗くて寒い気候・風土から哲学が生まれたと納得ができるという。
イメージを現実の形にするには大きなエネルギーが必要だ。所有者の許可を取り、コンセプトをどこまで死守するか、具体化にあたって細部にどのくらい力を注ぎ、こだわるか、そのひとつの完成を中華街で多くの人に体験してほしいとお話を聞いて、より強く思った。
「好きなことをやりたい」と西野さんは語った。今回の作品・會芳亭は宿泊することで、建築基準が厳しくなり、地震に耐える鉄骨を使っているが、西野さんの自身の中に鉄骨がとおっていると私は感じた。
■西野達郎(にしの たつろう)
1960年愛知県生まれ、ケルン在住。
ヨーロッパでは、Tazro Niscno、アメリカでは、Tatsurou Bshi と3つの名前を使っている。
来月10月には、ロスアンゼルスの近代美術館(MOCA)で、「ECSTASY In About Altered States」展に31人の作家と参加する。2006年の2月20日まで開催。
2005年9月11日 インタビュー
■「ヴィラ 會芳亭」 「横浜トリエンナーレ2005」の作品
■会 期 9月28日~12月18日
■見学無料 12:00~18:00
■宿 泊 1日1組(2名様)限定、予約制。
■予 約 平成17年9月20日より12月17日まで
平日15:00から18:00の間
■予約電話 090-9848-3059
■料金1泊1名 2,000円
詳細は下記ホームページをごらんください。 http://www.yokohama2005.jp/jp/
thhp://www.kaihoutei.com
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11日にインタビューしてから、執筆、確認、訂正と時間が経つうちに、内覧会の會芳亭関連記事が続きました。重なる部分もありますが、せっかく書いたので投稿します。
投稿者 sorbet : September 21, 2005 02:01 AM
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