根岸屋★メリの横濱アート逍遥/不定期連載第1回「横浜のへこみ―世界のへそ」
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
3月9日(木)は美術家・開発好明が「39アートの日」と勝手に認定し、日本各地津々浦々で同時多発的にアートな行為が開かれた事は多少なりともアートに関心ある方はご存知であろうが、ここ横浜でも実にほのぼのとした行為が繰り広げられたのである。
★世界のへそ寿町
かつては「労働者諸君、さあ飯を食え!」と港湾地区で働く労働者の背後で号砲が鳴り響いた正午。光り輝く横浜の「表」元町、中華街の最寄り駅・石川町に行為実行者たちが集まるという情報を得、私は一時帰国中の在独30年のビデオ作家・大園弥栄子嬢を誘っていざ石川町へ。
待ち合わせ時間に現れた関係者たちは私たち二人を除けば4,5人か。少ないとお思いの方もおられるかも知れないが、本日のギャラリーは出向く先の住人たち。ということで、石川町から徒歩ほんの3,4分で辿り着く光の当たらぬエリア寿町へと歩を進める。
ここは横浜市民にとっても「見えない」「見ようともしない」裏の世界。この多くの市民たちの視野に入らぬ「へこんだ」エリアを「世界のへそ」と名付けた今回の行為の首謀者・山岡佐紀子のアーティストとしての感性&眼力は近頃の日本では希少な、というか、上からの近代化=殖産興業思想に飼いならされた日本のアーティストたちの曇った目に日々出会っている身としては痛快この上ない。
と言ってもご本人から受ける印象は「のほほん」。トンガっているところはない。
こういう作家であるが故にこの「世界のへそ」と題したパフォーマンス(中韓では行為芸術と呼ぶ)がこの町の住人たちに見事にハマッタ。
★行為開始
「さなぎの食堂」で3百円均一のランチを急いでかきこんだ行為実行者たちは、この食堂の運営母体である「さなぎ達の家」へ移動。表では早速、「おへその写真を撮らせてください」と道行く中高年のオッチャンたちに呼びかける。この町では事情あって、写真に撮られるのを嫌がる人々が多いのだが、美へそのモデルとあって、はにかみながらも応じてくれるオッチャン多し。
中には前日テレビのニュースに出演したと嬉しそうに自慢するオッチャンまでいる。おそらく顔にはモザイクが入っていたと推測するが、それでもいくらかでも「どっこい生きている」自分が注目されたことが嬉しかったのだろう。そして写真の被写体となったのはにこやかなオッチャンたちの表情ではなく、個性あふれるおへその数々。
先ずは服をたくし上げおへそを露出。でべそ、縦割り、横割りと多様なへその数々が現れる。手術の傷跡、皺しわ、ツルツル、ポッコリ。そんな周囲の肌に好きな言葉を書いたり、絵を描いたり、花や宝石(イミテーション)で飾り付けたり、ブッシュ、小泉、天皇ご一家といった世界の偉人たちの写真を貼り付けたりとアートと寿町が見事に融合。そのアートな瞬間をポラロイドで撮って、「さなぎ達の家」の表に次々と展示と即席写真展。
展示が終わったら譲って、というオッチャン多し。静かな佇まいの中に絶え間なく笑いが起こる。この町の住人かと思ったら、BankARTで開かれている「食と現代美術展」の出品作家・北川純までアートの香りに魅きつけられたか虫のようにフラフラと現れる始末。
これも、数年この町に通って住人達と交流を重ねた山岡佐紀子のアーティスト魂の成果と言えよう。横浜市民としてアートウイルスを散布することを生業(なりわい)としている私としては学ぶべきこと多し。
★傍観者なんかやってられるか!
「さなぎ達の家」の中は集会所のようにオッチャンたちが集まっている。その彼らが表に出てきたところを狙って私も取材者でありながらつい
「さあて、今日は世界おへそデー。この良き日の記念にあなたのおへそを美しく飾り立てましょう!」と口からでまかせ。
そんな日あったっけ?とオッチャンたちの怪訝な顔。
「あなたのおへそはあなたの親と繋がった唯一の跡。そしてその先にはお祖父さん、ヒーお祖父さん、そしてご先祖さまへと繋がっています!おへその暗闇は実はそんな神聖なる空間。あなたも是非この厳かな儀式に参加しましょう!」
とおへそ撮影会に引っ張り込む。彼らは何のことやら理解していないようだが、私だって自分の言ってることを理解していないのだから当然か。大園嬢もいつの間にか、彼らに声をかけている。いつの間にか私達も行為実行者。
このような場所でフツー(って何だ)の人々が彼らと交流をすれば、つい「良いことをやっているのだ」と偽善的な自己満足に陥りがちだが、そんなものは私達行為実行者にはみじんもない。
自然に「俺達みんな人間だあ!」と声高ではないが心から一体になれた瞬間を創出すること。
これがアートなのである、と勝手な解釈。
★フィナーレ
行為終了後、「さなぎ達の家」の中を覗くと壁に見慣れた絵が。横浜トリエンナーレ参加作家・黒田晃宏のこの町の住人たちを描いた似顔絵ではないか。スタッフたちも、あの横浜トリエンナーレの黒田さんが、と嬉しそうに語る。横浜滞在中、彼はこの町に足を運びしっかり痕跡を残しておいたのね。
好漢・黒田!
次回はこの町でオッチャンたちと呑もう!
了)根岸屋★メリ
※参考リンク
★「さなぎ達の家」公式HP(「世界のへそ」へもリンク)
http://www.sanagitachi.com/wiki/?FrontPage
★「ヨコハマのドヤ街から」
http://www.commonsonline.co.jp/column-kotobuki.html
・・・・・・・・・・・・・・・・(追記)・・・・・・・・・・・・・・・・・・
このイベントの1週間程前、ドイツのバイオリニスト(チエリストだったかな)が、大阪でホームレス支援のためのコンサートを開くという記事を見ました。
その時にはっとして、本来私は、寿町の人たちを「支援」するようなイベントをする立場なんではないかと、思いました。友人に話すと「でも、逆に支援されちゃってもいいんじゃない?」。面白い友だちでしょう?頭やわらかいです。
一口に寿のおじさんと言っても、千差万別なのです。
中には「へそ?ばかじゃないの、あんたたち。頭がへんなんじゃないの!きちがいか!」と、憎しみを込めて、ののしったおじさんもいました。それは「正論」だなあと思いました。
一方、ちょっと足下も口調もよろよろしたおじいさんは、「かね......払ったら......してくれるの..?」と私たちに聞きました。「お金なんていらないよ!」と何度言っても、100円玉をわたしたちに押し付けて、「してくれる?」と。とても、うれしそうに、おへそを見せてくれて、字も書かせてくれて、「ありがとう、ありがとう」と言いながら、楽しそうに帰って行きました。きれいな白いお腹でした。このおじいさんは勘違いなのか?そうではないのか?
そこから、思ったのは、人と人の関わりというのは、一通りではないし、気持ち次第で変われる...それこそ、クリエイティブなことなのかもしれないということ。固定観念を持つもの、それを変えるのも、人間の力なんですね。関係性の種類は無限にあるのでしょう。文字どおり、100円の支援をうけました。ありがとう。
私は、その場所でアートを提供するのではなく、吸収したんだと、感じました。観客として、来てくださった人々も、すっかり、巻き込んでしまいました。ありがとう。
さて、そのへその写真は、予想をこえて、どれもかっこいいです。理由はよくわかりませんから、これからゆっくり考えます。
ポラロイドの他に、デジタルでも撮りましたがからあらためて発表することは、可能かとも考えてます。
山岡佐紀子
投稿者 takahashi : March 11, 2006 07:07 AM
TrackBack(0)
TrackBack URL for this entry
http://www.ycan.jp/blog_maintenance/mt-tb.cgi/454
comments(2)
山岡さん補足ありがとう。
>ばかじゃないの?
そう、こんな反応もあったのです。
しかしばかになれたおかげでオッチャンたちと
一体になれたのです。
ばかマンセ~!
39アートの首謀者・開発好明君もこの
レポート読んで感謝の言葉を送ってくれました。
山岡さん、ご苦労さまでした。
>しかしばかになれたおかげで・・・
バカになれたのは
あくまで僕たち(山岡さんたちも入れて大丈夫かなあ)でオッチャンたちじゃないからね。
誤解なきよう。
真の馬鹿者は
ほかにいる。
腹の上だったりして・・・。
コメントする
URLを本文中に張る場合は「http://」を除いた形でお願いいたします。(スパムコメント対策)
最近のコメント
もうひとつの横浜トリエンナーレ