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February 11, 2007

第7回ZAIMサポーターズスクール「アートと市民をつなぐ市民メディアの役割」レポート

 昨年7月から毎月1回開催されてきたZAIMサポーターズスクールでは、市民がアートに親しむために広報メディアが重要であるということがいろいろな形で指摘されてきました。
 そこで、去る1月27日(土)に行われた第7回サポーターズスクールでは、横浜市内でアート情報を市民に届ける市民メディアの運営に直接関わっている3人に集まってもらい、話を聞きました。(コーディネーターは「はまことり」の高橋晃氏。)
 最初は、フリーマガジン「アートデリ」を個人で編集発行している山内庸数さん。山内さんは、横浜市内のみならず、神奈川県内のギャラリー情報を足で歩いてアート関係者のネットワークを構築。紙媒体、印刷にこだわってアート情報誌の発行を続けています。
 2人目は、「横浜トリエンナーレ2005」のときにインターネット市民ラジオ局「ポートサイドステーション」で、「Take ART easy」というプログラムのディレクターを担当した菊池亮さん(現在は出版社勤務)。
 3人目は、市民ボランティア広報グループ「はまことり」の事務局長小島紫乃さん。「はまことり」は、「横浜トリエンナーレ2005」をきっかけに、横浜市内のアートに関わる出来事や関係者を取材し、ウェブサイト「YCAN.JP」の運営と「ヨコハマシティアートニュース」というフリーペーパーの発行を2つの柱として、市民が取材し伝えるアート情報、という切り口で活動を展開してきた市民グループです。

 まず最初に3人のパネリストから、それぞれが関わってきた活動の紹介とともに、それぞれのメディアの特性をどのようにとらえているか、が語られました。それを受けての、コーディネーターの高橋さんからの問いかけとそれに対する各パネリストの発言を以下に簡単にご紹介します。〔発言の文責はすべて筆者=曽田〕

山内:以前、印刷会社に勤めていたときに「自遊時間」というアート雑誌の発行を思いついた。中区のこの(注:「ZAIM」の)近辺だけでも50くらいギャラリーがある。ギャラリーは、直接自分がアートをするというよりアートを応援している立場だが、ギャラリーの経営はなかなか採算にはのらない。そこで、ギャラリーの活動紹介とアートのファンを増やそうと思ってアート雑誌(現在は「アートデリ」)を作った。アーティストは哲学的、思想的な語り口をしがちだが、「アートデリ」では、周りの人が面白がって見てくれるように、もう少しかみくだいたかたちでアートを伝えることをこころがけている。アート雑誌の発行は、企業の中では難しいところがあり、個人で発行している。資金が十分ではないため、定期発行まで行かない。紙媒体のメディアは一定のコストがかかり、それを回収しなければならないので、広い読者層の関心を惹くようなキャッチーな部分が必要だ。「横浜トリエンナーレ2005」の期間中には「アートデリ」の別冊「プッチデリ」を発行、1万部がはけた。予定していた部数では足りなくなったということは成功と見ていい。アーティストやギャラリーの人たちなどアートの関係者が情報を送ってきてくれる。情報発信をするとそこに情報が集まるというセオリーどおりの展開だと思う。

菊池:「横浜トリエンナーレ2005」期間中の「テイク・アート・イージー」は、19万人のユニークアクセス、ページビューはその4倍、いわゆるヒット数はその10倍くらいの多くのアクセスがあって、アート系のコンテンツの中では非常に高い注目を集めた。トリエンナーレ期間中、自分でアポ取りをして作家に会いに行って、つくった番組の数は全部で30くらい。週に2本くらいの割合。基本的には2人がコアメンバーでつくった。ウェブの場合、たしかに手軽に取材も番組制作もできるが、紙媒体に比べてウェブは費用が安くあがるのかというと必ずしもそうではない。現状では、(出演してくれる人に対して)ギャラが払えない。(そういう状況のため、)作家の側でも取材に時間を割くことのプライオリティが高くないので、制作上はいろいろ大変だったところもあるが、よかったのはアーティストの方たちをはじめいろいろな人たちとの出会いを持てたこと。(取材から公開までの)スピード感を大切にするということが市民メディアの強みになるとも考えられるので、できるだけ編集が少なくていいように考えて番組を作るなどの工夫をした。

小島紫乃(はまことり):「はまことり」の活動は、YCAN.JPとフリーペーパー「ヨコハマシティアートニュース」の2本立て。どちらも、参加しているメンバーのボランティアとしての取り組みで、金銭的な報酬はないが、活動が形になって残るし、ライターや編集担当として自分の名前が残る、という点がやりがいにつながっている。フリーペーパーは、そのためのネタ集めを特別にしたというよりは、関わったメンバーの関心そのものが記事になった。一次情報(自分の感じたこと、体験)を伝えることが出来た媒体だと思う。「はまことり」のよかったことは、作品制作中の(「横浜トリエンナーレ」に参加した)アーティストに自分たちの活動について関心をもってもらえたこと。そこから新しいアートプロジェクトが始まった。(一方的な受け手の側でなく)発信する側にいることが人との関わりを深めるということを実感した。プロではない市民であってもアートに直接関わることの醍醐味が感じられる体験だった。今後の課題としては、トリエンナーレが開催されていない時期は参加メンバーのモチベーションや活動の維持が難しいことが挙げられる。その点、次回の「横浜トリエンナーレ2008」のディレクターが先日決まったことが大きなプラスになる。

問い1(高橋)現代アートと生活とは一般的になじみにくいと思われている。現代アートが市民にとって身近になるにはどうすれば? 例えば、前回のトリエンナーレは、成功したとは言っても、地元の人は、「それ何?」という人が多い。伝わっていなければ意味がない。もっと人をひきつける仕掛けが必要ではないか。

山内:「横浜トリエンナーレ2005」は、約3ヶ月間で19万人が来場したが、一方、「野毛大道芸」は、二日間数千万円の規模の催しで来場者は100数十万人。どちらが成功しているのかと考えると、どっちとも言えない。だが、長い目で見るとトリエンナーレは将来的に横浜市に対して大きな貢献をすることができると思う。

小島:「はまことり」は、基本的には現代アートが好きな人たちが集まった。やってみて必要だと思ったことは、「地域とのかかわりが薄い」ということだった。「トリエンナーレ2005」は成功だったとは言っても、一般の人には、多かれ少なかれ、自分たちには関係ないことだと思われている。関心を持って関わった人たちでも、例えば、トリエンナーレが終わって(「はまことり」の)スタッフの多くがこれまでの関わりをそのまま継続できないという問題もある。フリーペーパーの第7号を発行してから第8号を発行するまでに一年間がかかっている。

菊池:現代アートがほかのものと競争力があるかというと、それはない。ほかに娯楽がない時代とは違う。発想を変えないといけないのではないか。メディアごとに特性が違っていて、紙の場合、渡すという行為が必要なので、手渡しすることでコミュニケーションが生まれる。一方で、情報量が多いということは必要。テレビの広告料が高いのにはそれなりの理由がある。量ではかろうとすると、市民が書いているというところの意味が薄れてくることに注意する必要がある。

山内:無理に規模を大きくしなくてもよいのではないか。必要とする人につながる方法があれば。「プッチデリ」は、人から人へ手渡しで渡すやり方で全部はけた。ただし、数というものにはやはり一定の力がある。(発行部数、読者数のような)目に見える数がないと(メディアの継続という意味で)長い期間を持ちこたえられない。

問い2(高橋):市民メディアはマスメディアと対抗できるのか。

(これに対しては、会場で自らストリーミング配信の陣頭指揮にあたっていたポートサイドステーション代表の和田昌樹さんから、以下のような発言があった。)

和田:市民メディアは、地域のリレーションを手がかりにしていて、お互いに認め合うとそれがパワーになっていく。市民メディアはやりようによっては影響力が大きくなることがあるということが重要。市民メディアというのは、手作り感があり、ある種の安心感がある。小さなメディアは文脈が生かしやすい。量で評価をするよりも、どういう仲間が得られたか。感動、体験が口コミとなってひろがる。

問い3(高橋):次回の「横浜トリエンナーレ2008」に向けて、市民メディアの役割とは?

山内:ビジュアルな「アートマップ」ができればよい。横浜市内だけでなく神奈川県全体のものがあるとよいと思う。また、現代アートとそれ以外の分野とが縦割りになって分離してしまっているところの接着剤をどうするのかが問題だ。

菊池:2001年のトリエンナーレはマスメディアを使った宣伝が主体だったが、2005年は口コミを活用するやり方がある程度うまく行った。サポーターに広報してもらうのが川俣(正)さんの手法だったのでは。次回は、一般の人が運営にかかわる隙間は減るのではないか。だが、失敗したら失敗したでよい。市民の側は、口コミでつないでいくことをやれればよい。マス媒体中心になって失敗したら、横浜市も口コミの重要性に気づくのでは。

小島:市民メディアを生かすには、マンパワーが命。魅力的な活動でなければ人が集まらない。前回は、うまくいったことがとても多い。たしかに人が入れ替わっているために継続性が問題ということはあるが、昨年来サポーターズスクールもやってきて、ここまで、おおむね順調に推移してきていると思う。たまたま自分は、昨年10月にシンガポール・ビエンナーレ視察の機会を得て、シンガポールでは、国家的な戦略が明確に打ち出されていることがわかった。横浜ではそういう戦略がなしで行われている面もあるが、逆に言えば、運営全体に市民が関わる隙があることが横浜のアドバンテージだと思う。

 ――以上が、当日の議論を簡略にまとめたものです。会場からの質問や意見も含めて話題は多岐にわたり、すべてを短い字数でまとめることは難しいのでその点はご容赦ください。

最後に、高橋さんから、来年度のサポーターズスクールで取り上げていきたいテーマとして、ボランティア・コーディネートのあり方やアートNPOの経営などが案があげられました。取り上げたいテーマに関して、皆さんからの提案も歓迎いたします。今後のサポーターズスクールに多くの方々の積極的なご参加をお待ちしています。 〔記録・文責=曽田修司(「はまことり」メンバー)〕


投稿者 sota : February 11, 2007 11:26 AM

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