第9回ZAIMサポーターズ・スクール報告「創造界隈の可能性」
第9回ZAIMサポーターズ・スクール報告
「創造界隈の可能性」
2007年3月24日(土)ZAIM別館2Fホール
パネリスト
池田修氏(BankArt1929代表)
田島孝通氏(北仲BRICK & 北仲WHITEオープン実行委員会事務局長)
里見有祐氏・及位友美氏(急な坂スタジオ)
コメンテーター
鈴木伸治氏(横浜市創造界隈形成推進委員/横浜市立大学準教授)
川崎義博氏(アーティスト/東京芸術大学講師)
栢原直弘氏(横浜市開港150周年・創造都市事業本部)
今回のスクールは「ZAIM de Festa 2007」の参加プログラムのひとつとして開催され、横浜市が推進している政策「クリエイティブシティ・ヨコハマ(http://www.city.yokohama.jp/me/keiei/kaikou/souzou/へリンク)」の「創造界隈形成事業」を取り上げました。
■創造界隈の形成とは(クリエイティブシティ・ヨコハマのパンフレットの記述を要約)
馬車道、日本大通り、桜木町・野毛の三つのエリアを中心に、民間と協働で、歴史的建造物、倉庫、空きオフィス等を活用し、アーティストやクリエーターが創作・発表・滞在(居住)することで街の活性化を図ること。
BankART1929、北仲BRICK & 北仲WHITE、急な坂スタジオは、その創造界隈形成事業の実験プログラムです。それまで使われていなかった建物がアートセンターとして活用され、アーティストやアートNPOの活動拠点となってきています。この事業の運営に携わっている方をパネリストに、また事業推進に関わっている方をコメンテーターにお招きして、それぞれの立場から
- どのように創造界隈の形成に寄与してきたのか
- それによって街とアートの関わりにどのような変化があったのか
- 今後どのような展開をみせるのか
について語っていただきました。
■BankART1929(2004年1月スタート)http://www.h7.dion.ne.jp/~bankart/
馬車道の旧第一銀行(BankART1929 Yokohama)と旧富士銀行(BankART1929馬車道)からスタートしましたが、旧富士銀行は東京芸術大学大学院映像学科誘致により2004年12月クローズしました。代替施設として2005年1月には旧日本郵船倉庫を活用したBankART Studio NYKがオープン。続いて2006年6月には黄金町に防犯とアートの拠点のBankART桜荘が、2006年7月には妻有大地の芸術祭に関連してBankART妻有が、2006年11月には本町ビルの中にBankART金庫室が開設され、事業を拡大しています。
ベースとなる事業としては、フロント業務、BankARTスクール、カフェ・パブ、ショップ、スタジオ運営、コンテンツ制作などがあります。フロント業務については、港湾ビューの歴史的建造物であることを意識し、イベントの有無に関わらず建物や風景を見学に来る人々に対して広く開いています。BankARTスクールは気鋭の講師陣で構成され、2ヶ月で8コマ、定員20名、月曜から土曜まで毎日開催し、生涯学習講座と大学院の授業の中間レベルで実施し現代の寺子屋を目指しています。8回同じ受講生が通ってくることで交流が生まれ、アフタースクールで自主的に批評紙をスタートさせた例もあるそうです。作品・演劇の制作スタジオは、2ヶ月単位で作家が作品制作場所として、展覧会場として、多くの人を招くサロンとして利用しています。また、まちづくり関係のオープンな共同オフィスも受け入れています。
ベーシックな活動に加えて、主催事業とコーディネート事業は1年半で900という驚くべき数をこなしています。これまでに、横浜の持っている財産(歴史的建造物・写真・食・舞踏)を現在の視線で捉えなおしリレーすること目指して「オープニングプログラム」「大野一雄フェスティバル」「BankART Life」「食と現代美術」などを主催しました。コーディネート事業に関しては、美術・音楽・ダンス・演劇・会議・パーティー等ほとんどすべての業種・形態のオファーに対応し、来るものを拒まず出口は少しだけ厳しくの方針で、年間1000のオファーに対し約350を実現しています。
BankART1929は都市部再生の起点プロジェクトとなることを目指しています。公設民営のため積極的に広く市民の企画提案を受け入れ、一方で先駆的な活動を推進していくことが可能であったり、民間レベルの自由度が与えられているため、収益の再投下、年中無休、オールナイトにも対応というフレキシブルな活用も可能といった特徴があります。自主企画のみならず市民やアーティストからのオファーを積極的に受け入れ、可能な限り実現しています。さまざまな芸術文化の発信の中で、市民との協働プログラムも数多く、これまで「椅子プロジェクト」「横濱モボ・モガを探せ!プロジェクト」「橋をかけろ!」などが実施され、プロジェクトを通してお年寄りや障害者とのネットワークを築いています。
BankART1929は人が往きかい、人が心地よく過ごせる駅のような空間でありたい。また、人や物や情報が動く交易の場でありたいとの理念が示されています。今後は、経済的な自立や他都市・海外との連携をはかっていく様子でますます目が離せません。
■北仲BRICK & 北仲WHITE(2005年5月スタート、2006年10月終了)http://www.kitanaka.jp/main.html
森ビルによる北仲通5丁目の再開発を前に、約1年半、旧帝蚕倉庫本社ビルと旧帝蚕ビルディングを活用したオフィス暫定利用プロジェクトです。アーティスト、建築家、デザイナー、ジャーナリスト等文化芸術活動に関連するグループ約50組が入居しました。入居条件のミッションとして「オープン・アトリエ(イベント時にはスペースの開放に積極的に協力する)」ということが課せられ、創造発信基地および市民とのコミュニティとして機能させる目的がありました。
北仲BRICK & 北仲WHITEの報告者、田島さんはたいへんポジティブな個性のアーティストで、北仲の特長を次のようにあげてくれました。
- ちょっとしたアイデアが迅速に作品や形になっていく
- 活動の自由度が大きいため可能性が拡大する(反面、拡大し過ぎるという悩みも)
- 身構えることなく、ものづくりの現場に遭遇できる
- 入居者同士の交流が盛んで、ふとしたことからコラボレーションが始まる
- BankARTや妻有などともすぐに仲間になれる
- 野球チームを作れば、ユニフォームをデザインする
- ひまわりを育てれば自然に近所の人とコミュニケーションが生まれる
古くて使い勝手の悪そうな建物も、入居者が思い思いに心地よい空間に変化させてしまったようです。入居条件に「オープン・アトリエ」というミッションがありますが、活動内容は自主性に任せられ、若い建築家や作家の個性とエネルギーを界隈に発信し街の活性化が図られたようです。これを機に入居者の約7割が、期間終了後もZAIMや本町ビル4,5階へ引越しアート活動を継続、横浜に定着したという事実は、創造界隈形成事業の実験プログラムの大きな成果のひとつといえるのではないでしょうか。
■急な坂スタジオ(2006年10月スタート)http://kyunasaka.jp/
野毛山の旧老松会館(結婚式場)を活用した舞台芸術を中心とした創造拠点で、世界水準の舞台芸術創造を目指しています。創造活動のためのスタジオを整備しており、公募によってレジデント・アーティストを迎え入れ、支援・育成しています。また、地域とアーティストの交流のプラットフォームとして、マンスリー・アートカフェの開催やライブラリーの設置を行っています。
急な坂スタジオはオープンから半年。舞台芸術を主軸とした創造拠点として次の4つの基本コンセプトを掲げています。
- アーティストが明確な目標を持てる街、横浜の実現
- 創造界隈の形成に向けた行政・NPO・アーティストの協同
- 舞台芸術のプロの養成と人材集積
- 舞台芸術を支える成熟した市民社会の実現
中でも、レジデント・アーティストを育成することによってアーティスト・コミュニティを形成しようというねらいは、舞台芸術の作り方にまで変化を及ぼしたようです。また、マンスリー・アートカフェは、レジデント・アーティストを囲んでさまざまな話題を討議する場で、新しいアート・コミュニティを創出しています。さらに、界隈の横浜市中央図書館、青少年交流センター、野毛山動物園などと関連企画も実施し、今後、地域との連携の強化をはかろうとしています。
一通りのパネリストの報告の後、コメンテーターに、これら創造界隈形成事業の実験プログラムの評価についてうかがったところ、コメンテーター各位から、成果が現れている。特にBankARTは顕著であるが、この実験プログラムは短期的な成果が求められるだけの事業ではなかろうとのことでした。また、現段階で創造界隈の貢献を評価するのは性急過ぎる、評価を誰がどのように行うべきか、評価軸からして考える必要があると問題提起がされました。クリエイティブシティの構想はクリエイティブ産業の振興とも捉えられるが、創造活動の拠点のみならず、いっしょに街をつくっていく企業も含めて界隈全体で評価軸を考えていく必要があろうと一致した意見でした。
(山岸泉)
投稿者 takahashi : March 31, 2007 02:10 AM
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