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July 30, 2007

西野 達「東京時間」               ■切取ることで見えてくるもの■

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西野 達
「MAMプロジェクト006:西野 達」展示風景
2007年
撮影:桜井ただひさ
写真提供:森美術館

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西野 達 《宿あり》1997年
ミクストメディア、石像(ニコラス・フリードリッヒ 《綱を引く男》 1908年)
展示風景:ケルン、ドイツ
Photos: Carsten Gliese


■「東京時間」  切取ることで見えてくるもの■

見なれた風景でも写真に撮って四角に切り取ると、いつもは気がつかなかったものを見つけることがあります。
西野氏の今回の作品では、時間と空間をひとつの部屋に閉じ込めました。53階の展示室に入ると、天井まで広がった窓の前に、ビデオカメラとモニターが据えられ、右の壁には交差点に座った大仏のイラスト、左の壁には東京タワーの写真にケバブを串刺しにしたイラストがありました。
モニターにはビルの屋上の時計が映っています。窓から見下ろすと、高速道路の脇のビルに時計を見つけました。実況中継をしているのです。入口を振りかえるとジーと音がして長針が動く、直径4メートルほどで壁いっぱいの時計がありました。やはり現時刻を指しています。映像で手元に引き寄せた遠くの時計と、現実の時計を目の前で確かめることができます。
作品のタイトルは「東京時間」。展示室内の時計とビルの上の時計はほぼ同じ大きさで、白い文字盤に黒で数字と「TATZU」のサインがあります。
日没後は、外に夜景が広がり、ガラス面や床に室内の時計が映り込んで、昼間とは違う空間になります。40ものアイディアから、この展示空間を最大限に生かすこの作品が生まれました。ここで夕暮れの空を眺めながら、時を味わう鑑賞をお勧めします。 


■アーティスト・トークにて■

●笑いがポイント
「どんどん質問してください。そのほうが楽しいから」、この一声からトークは始まりました。横3メートル、縦2メールほどの画面に作品の写真を写し、制作順に紹介してくれました。
西野氏の作品の多くは、公共の場にあるモニュメントを囲って、室内に閉じ込めて一時的に新たな空間を創り出すものです。ブルーシートで覆われたリビングなどに、彫像が置物のように据えられています。「作品の話をすると、その人の頭の柔らかさや想像力があるかどうかがよくわかるね」と西野氏。作品を目の前にして何度説明をしてもわからない人や「どうやってドアから像を入れたのですか」と質問されることもあるそうです。

●ユーモアはコンセプト
第1作は西野氏が住んでいる街ドイツ・ケルンで1997年に制作されました。許可を得て、壁紙張り、絨毯敷きまでほとんど自分で行い、予算の関係から展示は2日間でした。100年前につくられた石像を部屋に閉じ込めた作品で、石で作られた大男が小さな部屋に閉じ込められ、申し訳なさそうに背中をまるめている姿はユーモラスでもあります。
そもそも公共の場を作品に取り込んだのは、美術にあまり関心がない人に作品を見てほしいと考えたからだそうです。ですから、笑いは大切な要素なのです。写真だけで作品を見ると、意外性に爆笑が起こることもあります。今日集まった人たちは、西野作品を体感している人が多く、頭の固い人は少ないようでした。「もう少し笑いがほしいなあ」という西野氏のつぶやきも聞こえそうでした。

●機能する作品
街灯をキッチンやリビングの照明として取り込んだ作品(1998、1999)、ヴィクトリア女王像(2002)や馬像(2000)を取り込んで、空間をホテルにした作品、コンテナを喫茶室にしてクレーンで吊り上げた作品(2004)など、機能を持たせた作品もあります。アートには鑑賞以外の用途はない、用途のあるのは工芸であるという通念をも超えて、機能も楽しんでしまおうという、面白さがあります。

●アートを楽しむドイツの人たち
西野氏のドイツ行きは偶然でした。大学を卒業して、作品づくりに行き詰まり、美容院で「日本を出たい」と話したところ、たまたまドイツでの寿司屋のアルバイトを紹介してくれたそうです。偶然ではありましたが、ドイツだったから西野さんの作品は受け入れられたそうです。ドイツでは現代美術に理解があり、作品を面白がる土壌があり、公共物を作品にする許可も比較的とりやすいそうです。国際的な現代美術の展覧会がその土壌を作ったのではないかとお話くださいました。5年後ごとに60年続いているカッセルの「ドキュメンタ」や10年ごとに40年続いているミュンスター彫刻プロジェクトも野外展示には街の人たちがごく普通にでかけるといいます。(取材 sorbet)


■西野さんにお話を伺って■
まちに関わる人達の「見えない想い」を発見すること。それは私が専門領域である都市を考える上で一番面白い点のひとつです。西野氏の作品にもその様な面を発見しました。見慣れてしまったからこそ寂れてしまった人の「無意識の中にある日常」をモチーフとして切り抜く。その「きっかけ」により、注目を再び浴びることで日常が新鮮さで彩られ、ちょっと楽しい一日が始まる。その変化を起こすパワーを持っている西野氏ご自身と作品の魅力を存分に感じました。(砂川亜里沙)

■西野 達(にしの たつ) 
1960年、名古屋生まれ。武蔵野美術大学、ミュンスター美術アカデミー卒業。世界各地でアートプロジェクトを展開。ドイツ・ ケルン在住。 http://www.tatzunishi.net

<森美術館> 「MAMプロジェクト006:西野 達」 2007年7月11日(水)~9月24日(月・祝)
「アーティスト・トーク」7月11日(水) 森美術館ギャラリー2 http://www.mori.art.museum/contents/mamproject/project006/main.html
カタログは7月刊(森美術館 税込み1300円)

<これからの展覧会>
Blum&Poe, Los Angeles  2007年9月15日~10月28日

広島市現代美術館 2007年12月8日~2008年1月31日
http://www.hcmca.cf.city.hiroshima.jp/web/index.html

<YCAN関連記事>
June 13, 2006 天上のシェリー 西野 達展
http://www.ycan.jp/archives/2006/06/post_121.html

September 21, 2005 作家・西野達郎さんを制作現場にたずねて
http://www.ycan.jp/archives/2005/09/post_42.html

September 19, 2005 中華街に突如出没!贅沢なアートホテル「ヴィラ會芳亭」
http://www.ycan.jp/archives/2005/09/post_39.html


投稿者 sorbet : July 30, 2007 12:56 AM

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