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September 05, 2007

横浜美術館協力会 美術講演会  横浜トリエンナーレ2008に向けて『タイムクレヴァスの概要について』


講師:水沢勉氏
(横浜トリエンナーレ2008総合ディレクター)


2007年7月28日(土)
14:00~15:30 
横浜美術館レクチャーホール

水沢氏は講演で、考えながらていねいに言葉を選び、終始静かな口調で淡々と語りかけました。
まず、2006年11月に「横浜トリエンナーレ2008」総合ディレクターに就任してからの経緯、次に全体テーマ「タイムクレヴァス」について、最後に映像によるヴェネツィア・ビエンナーレ(イタリア、1895年からほぼ隔年開催)、ドクメンタ(ドイツのカッセル、1955年からほぼ5年ごとに開催)の紹介がありました。
今年2007年は、この二つの展覧会のほか、ミュンスター彫刻プロジェクト(ドイツ、1977年から10年ごとに開催)と三つの大きな現代美術の国際展が同時に行われる10年に一度の年でもあります。さらに来年は、シンガポール、上海、光州などアジアでのビエンナーレ開催が予定され、国際展に注目が高まっています。「横浜トリエンナーレ2008」も来年9月13日の開催に向って、しだいに具体的な内容が明らかになり、楽しみと期待が膨らみます。
また、この講演会は「横浜美術館協力会」の主催で、参加者どうし顔なじみの方も多く、あちこちであいさつをするなごやかな雰囲気がありました。

●「横浜トリエンナーレ2008」について考えていること
昨年11月に、「横浜トリエンナーレ2008」の総合ディレクターに就任した。8月に5人のキュレーターをスイスに集めて、まず30人くらいのアーティストについて相談をする。初めに有名作家をノミネートして先行発表することが国際展の定例ではあるが、発表の方法は検討したい。現在は展覧会の基本を作っている。会場に一歩入ったときに緊張を感じるような展示をしたい。  
1970年代、80年代は、現代美術においては、実験と革命の時代で、作品は孤立していても、難解でもよしとされていた。しかし近年は、国際展自体が経済効果のある大イベントになった。また、国際展のテーマは抽象的で、やわらかい紙に包んだ口当たりのよいものが主流である。しかし、私はそうしたくはない。

●全体テーマ「タイムクレヴァスTIME CREVASSE」
「タイムクレヴァス」は、(ディレクター候補として)プレゼンテーションをするときに自然に思いついた言葉で、次のようなコンセプトを込めている。「時間は無数の傷を負っている。しかし、それをだれも見ることはできな
い。感じることができるだけだ」。同じ時間を共有しているのに、そうとは思えない違い・傷があり、最もおおきな大切な傷(クレヴァス)がある。戦争、文化の違い、家族間、上司と部下の間にも違い・傷はあり、すぐれた芸術作品はこのタイムクレヴァスを我々に感じさせてくれるものである。
サブタイトルとして考えているものは、決定ではないが、「彼方の対話 Beyond-Dialogue」は、ハイフンでつながれたひとつの単語で「彼方から生じてくる対話」を意味し、ときには非言語的なものもある。二つの単語から成る「対話の彼方 Beyond Dialogue」、「沈黙などの、対話の向こう側にある何か」とは違うことを整理しておきたい。「彼方の対話」は、美術が彼方のまったく違うものをもたらし、呼び覚ますこと、芸術表現は奇跡のような恵みであることを意味している。芸術の解釈は世界中どこでも共通のものではない、作品を見ただけですぐにわからないからこそ、五感をすべて使って感じ取ろう、理解しようとするところから異次元の「彼方の対話」が生まれるのである。

●「見えない時間の亀裂を知る」現代美術
1900年のパリ万国博覧会には200万人が訪れ、19世紀後半に万博は五感のなかで視覚を優先させる世界的なシステムをつくりあげた。パリ万博はその頂点に位置する。私は視覚が大きな力をもちすぎていることに疑問を提示したい。小さな視覚情報で簡単に得られることは、あまりにも不完全であるからだ。また、視覚重視の考えは、グローバリゼーションによる情報の均質化をもたらし、格差を助長している。考古学者は、土器についた土をなめて年代を知ることができるという。たとえば、石を見て、触れて、においを嗅ぎ、たたいて音を聞き、なめて味わうことによって、石が今ここに存在するまでの見えない時間、そしてその亀裂さえも知ることができる。同じように現代美術も五感で鑑賞するものである。

●ドクメンタ12を評価する
今年のドクメンタはオープニングまで作家を発表しない、例外的な手法だった。作家を差別することがなく、私はよいと思った。キュレーターのロジャー・M・ビュルゲルは、商業主義主導の現代美術に疑問と批判を込めている。全体はたいへん地味な国際展となったが、ドクメンタというプロジェクト全体の存在感は疑いない。それにはドクメンタがカッセル全市をあげて訴求力があるものに成長させてきた自信が裏づけにある。
展示が丁寧で、全体として静かで無駄がない。やはり、ナチスによって荒廃した美術を、戦後復興させたいという基本動機が強く、ドイツでの現代美術への揺るぎない自信というものを感じた。ジャーナリズムでは、地味、スターがいない、話題性がないと批判され、来場者はあまり多くはないが、落ち着いて見る価値がある。

■「横浜トリエンナーレ2008」公式ホームページ http://www.yokohamatriennale.jp/2008/ja/
会期:2008年9月13日(土)~ 11月30日(日)(計79日間)

■「横浜トリエンナーレ2008を盛り上げる市民活動」の情報   http://www.yaf.or.jp/yokotori/entrance2.html

■横浜シティネットワーク関連記事   http://www.ycan.jp/archives/2006/11/index.html
(取材 写真Takahashi  文sorbet)


投稿者 sorbet : September 5, 2007 11:12 PM

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